「ふう」秋号より つげ幻象抄出(no.37)
| 茅花流し帽子のリボン揺れ合うて | 栗山政子 |
| 麦秋のうねりの中に鳴るピアノ | 中田千惠子 |
| 緋のダリア石垣残る史料館 | 春田こでまり |
| ヴィーナスを迎へにくるよ花筏 | 春田珊瑚 |
| 五月来る水平に鳥飛んできて | 徳永芽里 |
| はくれんの空や光に抱かれる | 久松よしの |
| 青胡桃前髪伸ばしたき男の子 | 前川 久 |
| 水音は町の鼓動や春動く | 東川あさみ |
| 水無月のひかり吸ひこむハオルチア | 村井丈美 |
| したしたと瞑る四神や樟若葉 | 両角鹿彦 |
| 葉桜や抗議のこゑの遠のきぬ | 安田蒲公英 |
| 春袷妣の縫ひ目をなぞりけり | 三津守祐美子 |
| 金魚鉢をつらぬく日射し床に臥す | 安藤貴夫 |
| 自転車屋の奥の暗闇つばくらめ | 山本洋子 |
| 未だ旅の途中麦秋の風の音 | 伊津野 均 |
| 信州の春とほからじ水に慣れ | うかわまゆみ |
| 素泊りに草餅ふたつ鄙の宿 | 五十嵐妖介 |
| 春の草せつなきまでに名が付きて | 岩片えみ |
| 青麦や二両電車は山めざし | 蔵田孝子 |
| 遠くでも近くでもなく山桜 | 小林美喜子 |
| 桑の実の熟し頃なる雨ぽつぽつ | 海野良子 |
| 草笛を吹く子吹けぬ子下校の子 | 池田のりを |
| 堤防をゆく春風の中をゆく | 塩見明子 |
| 青天やしだれ桜の傘の中 | 杉本かつゑ |
| 白昼夢二回つづけて雉が鳴き | 酒井航太 |
| 初蛍黄泉の父への文を書き | 栗山豊秋 |
| 万緑やちひさき水は強く照り | 柘植史子 |
| 天地へ躍り出でたる滝こだま | 辻 紀子 |
| 蕎麦すすり髭をあたりて夏越かな | 添田ひろみ |
| この町の坂を楽しむ立夏かな | 髙木胡桃 |