「ふう」春号より 栗山政子抄出(no.19)
カーテンを人差し指で開き冬 | 酒井航太 |
木犀の午後なら友達になれる | 塩見明子 |
コロポックルひそと遊べる大花野 | 杉本かつゑ |
生きてこそレゾン・デートル冬の月 | 添田ひろみ |
冬浅し門灯ちらつきながら付き | 髙木胡桃 |
草叢のさいごの薊つゆまみれ | 田中まり |
バリカンの音の寒さをはしらする | つげ幻象 |
はつきりと物言ひ牡蠣フライさくつ | 柘植史子 |
手袋をこの世に忘れ三回忌 | 辻 紀子 |
虫の音やうるみて来たる胸の奥 | 徳永芽里 |
赤き実に冬鳥二羽のホバリング | 中里鮎子 |
コート干す昨日のわたくしを癒し | 中田千惠子 |
秋蟬やハザードマップ見直して | 春田こでまり |
GO To Eat 中庭に実むらさき | 春田珊瑚 |
秋風や鏡を拭いて過去は過去 | 東川あさみ |
峠道ゆるゆる下り冬菜畑 | 久木すいか |
壁紙を貼る手にちから鵙高音 | 久松よしの |
店頭にまつ赤な林檎こんにちは | 広瀬信子 |
枯草にひとすぢ残るゴッホの黄 | 深澤れんげ |
枯むぐら遊歩道まで波の跡 | 前川 久 |
雨上り金木犀の星を掃く | 三津守祐美子 |
秋深しガラスの箱の喫煙者 | 村井丈美 |
狐火を見たぞ見たぞと兄おとうと | 両角鹿彦 |
冬うららみなとみらいへ迷ひこみ | 安田蒲公英 |
その話しない約束秋刀魚食ふ | 山本洋子 |
歯を立てて檸檬の黄色確かむる | 五十嵐妖介 |
冬来たる集会室のドアノブに | 池田のりを |
干菜吊る出入自由の猫の村 | 伊津野 均 |
酒蔵の匂ひふつふつ山眠る | 上田信隆 |
舌の上の水の切つ先朝月夜 | うかわまゆみ |
寄生の実のかがやきを増す十二月 | 海野良子 |
壁面緑化社屋完成小鳥来る | 大石 修 |
いわし雲ジーパンはまだ乾かない | 蔵田孝子 |
冬蒲公英歩けば日差しついて来し | 小林美喜子 |
天使を飾り終へて樅の木の冬 | 小山鷹詩 |