ふう」秋号より 栗山政子抄出(no.17)
| 滝しぶく龍のお告げに耳澄まし | 五十嵐妖介 |
| 遠雷やオーバーランの機より降り | 池田のりを |
| 海芋咲く寺と社へ水分れ | 伊津野 均 |
| 浮雲のどつと過ぎゆく夏野かな | 上田信隆 |
| 薔薇一輪鬼門を向きて応へけり | うかわまゆみ |
| 吐きて吸ふ空気のうまし桜桃忌 | 海野良子 |
| 水面より一閃の鮎風を食む | 大石 修 |
| 橡の花テイクアウトのピザ熱く | 蔵田孝子 |
| 蓮開く約束の刻過ぎてをり | 小林美喜子 |
| 青林檎過去は夜半に戸を叩く | 小山鷹詩 |
| 包丁を握る四月のつめたい手 | 酒井航太 |
| 夏草と遊具ただただ吹かれをり | 塩見明子 |
| 巴里祭や娘の忘れたる銀の靴 | 杉本かつゑ |
| すかんぽや楽しきことは裏庭に | 添田ひろみ |
| 父の日や瓶に残りしままのジャム | 髙木胡桃 |
| 芦生夏演習林へ犬放つ | 田中まり |
| いかづちのひび奔りたる画面かな | つげ幻象 |
| 払はれて一筋およぐ蜘蛛の糸 | 柘植史子 |
| 骨密度標準げんげ摘みにけり | 辻 紀子 |
| ひとりづつ並木を抜けて立夏かな | 徳永芽里 |
| 白花の風ひそやかに山法師 | 中里鮎子 |
| 水に生ゆる新樹人はいづこより | 中田千惠子 |
| 公園のベンチをさがす蝶の昼 | 春田こでまり |
| 小籠包のスープあふるる春の雷 | 春田珊瑚 |
| 色鉛筆の青の濃淡風光る | 東川あさみ |
| 万緑や聳ゆる門の怪しげな | 久木すいか |
| 陽に透けて陽になりゆける柿若葉 | 久松よしの |
| 花柄の財布を拾ふ春一番 | 広瀬信子 |
| 芝青むブックバンドの下ろし立て | 深澤れんげ |
| 万緑やサドル一段高くして | 前川 久 |
| 売家なる昭和の館花辛夷 | 三津守祐美子 |
| 洗濯機を洗ふ洗剤夏旺ん | 村井丈美 |
| 牡丹の芽ぬれてにはかに焔立つ | 両角鹿彦 |
| 風を牽くオルガンの音や夏きざす | 安田蒲公英 |
| 駆け落ちをしたことあると春手套 | 山本洋子 |