「ふう」夏号より 栗山政子抄出(no.16)
| 風花や急ぐ伊勢丹紙袋 | 山本洋子 |
| 神域を一枝はみ出す若緑 | 五十嵐妖介 |
| 勇魚来る風を大きくひからせて | 池田のりを |
| 庭に居る妻の声聞く四温晴 | 伊津野 均 |
| 冴返るこつんと卵かけご飯 | 上田信隆 |
| 曇天にぴたり張り付く霧の花 | うかわまゆみ |
| 水の上に水のひろがる初音かな | 海野良子 |
| 溶け合うて水平線は春天へ | 大石 修 |
| 空ばかり見てゐて白く冬木立 | 蔵田孝子 |
| 出来たての轍あやふや春の雪 | 小林美喜子 |
| 蠟梅の香に殴られて眼を閉ぢる | 小山鷹詩 |
| まつしろな防護姿や梅の花 | 酒井航太 |
| 生意気を言つて大きな石鹸玉 | 塩見明子 |
| 長閑さや猫のあくびの音もなく | 杉本かつゑ |
| 春光の青吾もまた地球の子 | 添田ひろみ |
| 三月の斜線の多き手張かな | 髙木胡桃 |
| 父の干す母のメリヤス冬泉 | 田中まり |
| 羞ひの光をこぼす冬の梅 | つげ幻象 |
| 振替休日どこからも古巣見え | 柘植史子 |
| 卒業子へ天声人語切り抜きぬ | 辻 紀子 |
| 啓蟄や箱いつぱいに古雑誌 | 徳永芽里 |
| 画廊から昇れば出口初しぐれ | 中里鮎子 |
| 知らぬ間に時給が上がり梅の花 | 中田千惠子 |
| 声をかけ抜き去るランナー花八手 | 春田こでまり |
| 改札を過ぐ白マスク黒マスク | 春田珊瑚 |
| 泣きたき日の紅葉アメリカ楓の赤 | 東川あさみ |
| ポッキーをぽきぽきぽきと土手の春 | 久木すいか |
| 校舎よりあふれ出したる卒業歌 | 久松よしの |
| 口紅の三本セット春隣 | 広瀬信子 |
| 一枚の切手を足して冬ぬくし | 深澤れんげ |
| 内裏雛我より先に古希迎ふ | 前川 久 |
| 冴返る回覧板の四隅擦れ | 三津守祐美子 |
| 手袋を捜しに戻る山毛欅の森 | 村井丈美 |
| 逃亡の丘の自転車冬夕焼 | 両角鹿彦 |